両生類・爬虫類の腸内細菌が「抗腫瘍効果」を示した研究(JAIST ほか/Gut Microbes)
北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)などの研究グループは、ニホンアマガエルなどの腸内から分離した細菌の一つが、マウスの大腸がんモデルで強い抗腫瘍効果を示したとする研究成果を発表した。成果は学術誌 Gut Microbes に掲載された。
要点(ざっくり)
- ニホンアマガエル由来の Ewingella americana を、腫瘍形成後に尾静脈から1回投与。
- 皮下に作った腫瘍(同系腫瘍モデル)で、腫瘍退縮と、定義上の完全奏効(CR)に達したと報告。
- 比較として用いた抗PD-L1抗体やドキソルビシン(いずれも複数回投与)より、腫瘍縮小・CR率が高かったとする(各群 n=5)。
- ただし、マウス実験かつ皮下腫瘍モデルであり、人での治療に直結する話ではない点に注意。
研究の概要
細菌の分離元
研究では、以下の動物の腸内から細菌を分離し、抗腫瘍効果を調べた。
- ニホンアマガエル
- アカハライモリ
- カナヘビ
評価に使ったモデル(同系腫瘍モデル)
評価には、マウス大腸がん細胞(Colon-26)をマウスの皮下に移植して腫瘍を作る「同系腫瘍モデル」を使用。
腫瘍が一定の大きさになった段階で、細菌を尾静脈から1回投与して経過を追ったという。
結果:Ewingella americana の単回投与で腫瘍退縮・CR
その結果、ニホンアマガエル由来の Ewingella americana を単回投与した群では、腫瘍が退縮し、研究で定義した 「完全奏効(CR:治療後、触知できる腫瘍が少なくとも30日間ない状態)」 に達したと報告している。
比較対象として用いた抗PD-L1抗体やドキソルビシン(いずれも複数回投与)よりも、腫瘍縮小・完全奏効率が高かったとしている(実験は各群 n=5)。
作用機序の示唆(論文が述べるポイント)
論文は、作用の仕組みとして主に次の2点(両面)を示唆している。
- 腫瘍内に集積・増殖しやすい性質を持つ可能性
- がん細胞を直接傷害する作用に加え、免疫細胞の浸潤やサイトカイン応答などを通じて 宿主免疫を活性化する可能性
注意点・限界(ここ大事)
- マウス実験であり、人への有効性は別途検証が必要。
- 腫瘍は腸管内(正所性)ではなく、皮下に作った腫瘍モデルで評価している点に注意。 研究者らは、皮下モデルには「血流経由の集積」を検証しやすい利点がある一方で、正所性モデルとは条件が異なると述べている。
- 投与量の検討では高用量で急性致死が生じたとも記載されており、 「生きた細菌」を用いた治療を人に応用するには、投与方法・安全性設計・臨床試験などの追加検証が不可欠。