2026年8月3日、日本市場は波乱含みだった7月を終え、8月相場に入る。
7月末の日本株は、半導体・AI関連株を中心とする急落の反動から大きく反発した。しかし、円相場への介入観測、日銀の追加利上げ観測、原油価格の高止まり、米長期金利の上昇など、相場を不安定にする材料は残ったままだ。
さらに今週は、トヨタ自動車、三菱重工業、ホンダ、任天堂、ソフトバンクグループなど、日本市場への影響が大きい企業の決算が相次ぐ。週末には米国の7月雇用統計も予定されており、企業業績と金融政策の両面から方向性を探る一週間となる。
本稿では、2026年8月3日未明時点で確認できる市場環境と、8月3日から7日までの主な予定を整理する。
注意:日米共同の為替対応については、ロイターが関係者情報として「8月3日に発表される見通し」と報じている段階であり、記事作成時点では日本・米国当局による正式発表を確認できていない。
7月末の日本株は急反発、ただし不安定さは残る
7月31日の東京市場では、日経平均株価が一時5%を超えて上昇した。直前まで売り込まれていた半導体・AI関連株を中心に買い戻しが入り、月末としては非常に大きな反発となった。
もっとも、これは日本企業の業績見通しが一斉に改善したというより、短期間で進んだ下落に対する反動の性格も強い。米国のハイテク株、米長期金利、為替相場の変動次第では、再び値幅が拡大する可能性がある。
8月相場の出発点としては、「7月末に底打ちが確定した」と決めつけるより、反発がどの業種まで広がるか、売買代金を伴って上昇が続くかを確認する必要がある。
最大の不確定要因は円相場と為替介入
ロイターは、日本政府が8月3日に、日本と米国が円安阻止に向けた共同措置を取ったことを発表する見通しだと報じている。
ただし、現時点では関係者情報に基づく報道であり、正式発表前である。共同措置の具体的な内容も、協調介入だったのか、米国側がどの程度関与したのか、政策協議や声明を含む広い意味での共同対応なのかは確定していない。
ドル円相場は、円買い介入とみられる急変動を経て、7月31日の海外市場では1ドル=159円前後で推移した。
日本株への影響を考える場合、為替の水準だけでなく、変化の速さが重要となる。
- 円安が緩やかに修正される場合は、輸入物価や家計負担の軽減につながる
- 短期間で大幅な円高が進む場合は、自動車・電機など輸出企業の業績前提が意識される
- 介入後も円安が続く場合は、追加介入や日銀の利上げ観測が強まりやすい
今週はドル円の方向だけでなく、政府・日銀関係者の発言と、157円から160円付近での値動きの荒さを確認したい。
日銀は政策金利を据え置き、今後の利上げ条件が焦点
日本銀行は7月30日・31日の金融政策決定会合で、政策金利を1.0%程度に据え置いた。一方で、物価見通しや円安、原油価格の上昇を踏まえ、今後の追加利上げを巡る市場の警戒は続いている。
8月3日14時には、7月会合の「経済・物価情勢の展望」全文が公表される。
注目点は、単純な物価予想の数字だけではない。
- 原油高と円安を一時的な要因と判断しているか
- 基調的な物価上昇がどの程度続くと見ているか
- 賃金上昇と個人消費をどう評価しているか
- 次回利上げに必要な条件をどのように説明しているか
今週は10年国債と30年国債の入札も予定されている。入札需要が弱ければ長期金利が上昇し、銀行、保険、不動産、REITなど金利変動の影響を受けやすい業種に波及する可能性がある。
米国株は反発したが、長期金利は高水準
7月31日の米国市場では、S&P500が0.70%高、NASDAQ総合指数が1.00%高、ダウ平均が0.53%高となった。
Amazonの株価が決算を受けて約15%上昇した一方、Appleは約7.4%下落しており、米国市場でも指数全体が一方向に動くというより、決算内容による選別が強まっている。
米10年国債利回りは一時4.747%まで上昇し、4.708%付近で取引を終えた。高い金利は銀行などに恩恵を与える面がある一方、将来利益を高く評価されているAI・半導体・成長株には割高感を意識させやすい。
日本の半導体関連株にとっても、米AI企業の決算だけでなく、米長期金利が4.7%前後で推移するかが重要となる。
原油は90ドル台、OPECプラスの増産だけでは安心できない
7月31日の原油先物終値は、北海ブレント原油が1バレル=90.12ドル、米WTI原油が84.67ドルだった。
OPECプラスは、9月の生産枠を日量約18万8,000バレル引き上げることで合意した。しかし、産油国の生産能力や、ロシア・中東などを巡る供給障害を考えると、増産枠がそのまま実際の供給増加につながるとは限らない。
原油価格の高止まりは、資源開発会社や石油元売りには追い風となりやすい。一方、航空、陸運、化学、電力、食品、小売などでは、燃料費・物流費・原材料費の上昇につながる。
円高が進めば円換算の輸入負担は軽くなるが、原油そのものが上昇すれば効果は相殺される。今週は為替と原油を別々に見るのではなく、「円建て原油価格」がどう動くかを確認したい。
2026年8月第1週の主な市場スケジュール
| 日時 | イベント | 主な注目点 |
|---|---|---|
| 8月3日(月)14:00 | 日銀「経済・物価情勢の展望」全文 | 物価上振れリスク、円安・原油高への評価、追加利上げの条件 |
| 8月3日(月)23:00 | 米7月ISM製造業景況指数 | 新規受注、雇用、仕入価格。米景気とインフレの両面を確認 |
| 8月4日(火)8:50 | 日銀マネタリーベース | 日銀が直接供給する通貨量と日銀当座預金の動向。国債保有縮小については、保有国債残高や国債買入れ実績を別途確認 |
| 8月4日(火)10:30/12:35 | 10年国債入札/結果 | 国債需要と長期金利。銀行、保険、不動産、REITへの波及 |
| 8月4日(火) | トヨタ自動車 2027年3月期第1四半期決算 | 北米販売、関税、原材料費、為替前提、通期見通し |
| 8月4日(火)13:30 | 三菱重工業 第1四半期決算 | 防衛、原子力、ガスタービン、受注残と採算性 |
| 8月4日(火)21:30 | 米キャタピラー決算説明会 | 世界の建設、鉱山、エネルギー設備投資の動向 |
| 8月4日(火)23:00 | 米JOLTS求人件数 | 求人、採用、離職率から米労働市場の需給を確認 |
| 8月5日(水)早朝 | AMD 2026年第2四半期決算 | AI向け半導体、データセンター売上、供給計画。日本の半導体株にも影響 |
| 8月5日(水)8:30 | 日本6月毎月勤労統計・速報 | 名目賃金と実質賃金。個人消費と日銀の利上げ判断に関係 |
| 8月5日(水)8:50 | 日銀6月会合議事要旨 | 委員の物価・金利認識。ただし7月会合より古い資料である点に注意 |
| 8月5日(水)15:30 | ホンダ 第1四半期決算 | 北米自動車、二輪、関税、EV投資、為替前提 |
| 8月5日(水)23:00 | 米7月ISMサービス業景況指数 | 米国経済の中心であるサービス業の雇用と価格動向 |
| 8月6日(木)8:50 | 対外・対内証券投資 | 国内投資家の海外証券売買と、海外投資家の日本株・国内債券売買。指定報告機関ベースの速報統計 |
| 8月6日(木)10:30/12:35 | 30年国債入札/結果 | 超長期債の需要。生保、銀行、REIT、不動産株への影響 |
| 8月6日(木) | 任天堂 第1四半期決算 | ゲーム機本体、ソフト販売、供給状況、通期販売計画 |
| 8月6日(木) | ソフトバンクグループ 第1四半期決算 | AI関連投資、保有資産価値、Vision Fund、資金調達 |
| 8月6日(木)13:30 | NTT 第1四半期決算資料 | 通信収益、データセンター、設備投資、株主還元 |
| 8月6日(木)21:30 | 米4~6月期労働生産性・単位労働コスト | 賃金上昇を生産性向上で吸収できているかを確認 |
| 8月7日(金)8:30 | 日本6月・4~6月期家計調査 | 物価高の下で実質消費が維持されているか |
| 8月7日(金)8:50 | 7月上中旬分貿易統計 | 輸出入、自動車、半導体、エネルギー輸入額の初期動向 |
| 8月7日(金)14:00 | 日本6月景気動向指数・速報 | 一致指数と先行指数から国内景気の現在地を確認 |
| 8月7日(金)21:30 | 米7月雇用統計 | 雇用者数、失業率、平均時給。米金利、ドル円、世界株に影響 |
※時刻は日本時間。企業の発表時刻や経済指標の日程は変更される場合がある。
今週の要注目ポイント
1.日米共同対応が正式発表されるか
最初の焦点は、日米による円安阻止策に関する報道が、正式発表によって確認されるかである。
発表された場合も、名称だけで判断せず、実際に米国が円買い介入へ参加したのか、政策協議や情報共有を共同対応と表現しているのかを確認する必要がある。
2.円相場の水準より変動速度
輸出企業にとって、160円前後の円安が続く場合と、短期間で155円台まで円高が進む場合では、決算への影響が大きく異なる。
今週発表される企業決算では、会社側が置いている想定為替レートと、為替感応度の説明に注目したい。
3.日銀見通しと賃金統計
日銀の展望レポートと毎月勤労統計を組み合わせることで、物価と賃金の循環が持続しているかを確認できる。
賃金が増えていても、物価上昇を差し引いた実質賃金が弱ければ、個人消費には慎重な見方が残る。一方、実質賃金が改善すれば、内需の回復期待と追加利上げ観測の双方が強まる可能性がある。
4.国債入札後の金利反応
10年債・30年債入札が不調となれば、長期金利や超長期金利が上昇しやすい。
金融株にとって金利上昇は利ざや改善要因となる一方、保有債券の評価や資金調達コストへの影響もある。不動産やREITでは割引率上昇が意識されやすく、単純な業種一括評価ではなく、各社の財務構造を見る必要がある。
5.主力企業の通期見通し
今週の国内決算では、四半期利益そのもの以上に、会社側が通期計画を維持・上方修正・下方修正するかが重要となる。
特に確認したいのは、次の項目である。
- 想定為替レート
- 米国の関税負担
- 原材料費・物流費
- AI・データセンター関連の設備投資
- 受注残と利益率
- 株主還元方針
6.米雇用統計後の「金利・ドル・株」の組み合わせ
米雇用統計は、結果の強弱だけではなく、その後に米長期金利、ドル円、NASDAQがどう反応するかを見る必要がある。
- 雇用が強く金利も上昇する場合は、ドル高要因となる一方、高PER株には重荷となる
- 雇用が適度に減速して金利が低下する場合は、米成長株には支援材料となり得る
- 雇用が大幅に悪化した場合は、利下げ期待より景気後退懸念が優勢になる可能性がある
まとめ
2026年8月第1週の日本市場は、単純な強気・弱気の二択で整理しにくい。
7月末の日本株は大きく反発したが、円相場への政策対応、日銀の利上げ観測、原油90ドル台、米長期金利の高止まりという不安定要因が並存している。
一方で、今週は日本の主力企業が相次いで決算を発表する。指数全体の方向だけを見るよりも、各企業が為替、関税、原材料費、AI投資、国内消費をどのように評価しているかを確認する方が、市場の実態を把握しやすい。
今週は「指数が上がるか下がるか」を決め打ちする週ではなく、為替・金利・原油・企業決算・米雇用という五つの材料に対して、各業種がどう反応するかを見極める週となりそうだ。